登場人物対比の妙、真田丸
丙申弥生弐拾六日
うじざねクン 祝言が血で汚されて、散々だったね。
のぶしげクン 予定調和と言えばそうだけど、史実から言えば無理があるよね。やっぱり側室と祝言を上げるというのは。それに室賀さんが殺された逸話はわりときちんと残っていて、天正12年(1584年)7月らしいね。
うじざねクン でも、うまいこと物語に組み込んだものだね。さすが三谷さん。
しかも、賢い女の梅ちゃんと愚かな女のきりちゃんって感じで。
のぶしげクン これって、ばーちゃんとかーちゃんの対比と同じだね。
うじざねクン 対比があると見ている方は感情移入をしやすくて分かりやすいからね。演出のオーソドックスなひとつの手法だけど、特に愚かな方を演じる役者さんは大変だよね。黒木華さんの演技力に称賛が集まる一方、長澤まさみさんは評価されないというかわいそうなことにもなってるようだけど、あの浮いた演技はいいよね。
のぶしげクン オイラと兄ちゃんも対比でしょ。
うじざねクン はしっこいのぶしげクンとまじめなのぶゆきクンだね。
のぶしげクン そして、どんなことにも対応できる出浦のオジサンと融通の利かない室賀のオジサン。
うじざねクン その室賀正武は、今回で退場ですね。なかなか印象に残るいい役でした。
真田名物かりがね踊りとは
のぶしげクン ところで、今回は姉上が大活躍だったね。
うじざねクン のぶゆきクンの奥さんね。長野里美さんが演じるところの「こう」と言う名の女性。何しろこの時点ではのぶゆきクンの正室と言う説もあるよね。
のぶしげクン あれっ、正室は後の小松殿じゃないの?
うじざねクン のぶゆきクンが家康の家臣になって忠勝の娘を娶るまでは、こうさんが正室だったみたいだね。この人はどうやら真田信綱の娘のようなんだ。
のぶしげクン 信綱と言えばオイラの伯父さんにあたる人。
うじざねクン そう、真田昌幸の長兄、信綱の娘だそうだね。ということは、のぶしげクンとはいとこにあたる。もちろんのぶゆきクンともいとこ同士だね。
のぶしげクン 真田家嫡男の信綱叔父が長篠の戦で戦死し、次男の昌輝叔父も一緒に亡くなったのでとーちゃんの昌幸が真田家を継いだんだ。オイラが後年左衛門を名乗るのはこの人に由来するんだよね。でも、信綱叔父は左衛門尉で、オイラは左衛門佐だから、ちょっと上だけどね。
うじざねクン まあそれはいいとして、その真田信綱の娘であり、かつのぶゆきクンの正室だったので真田名物かりがね踊りを知っていても当然。
のぶしげクン かりがね踊りって何だろうね?
うじざねクン 歌舞伎に「雁金五人男」なんてのもあるけど、これは元禄年間に成立しているので関係はないよね。
のぶしげクン 出雲阿国がメジャーになる前だしね。
うじざねクン だから、真田家の紋からきているようだね。真田と言えば六文銭だけど、かりがね紋も使ったらしいよ。
「雁が音」と書いて、雁の鳴き声のことを言ってたようだけど、そのうちに雁自体を言うようになったって。そこから来たのが「雁が音踊り」みたいです。そこから転じて「雁金」って言うこともあるらしいね。
のぶしげクン そういえば踊りの最中に姉上が両手の間から顔を出すってシーンもあったよね。あれって、雁が音の紋にそっくりだ。ところで、今の舞台が天正12年(1584年)でしょ。姉上って病弱だけど、すぐに亡くなったりはしないよね。
うじざねクン そうだね。文禄4年(1595年)にのぶゆきクンの長男を産むので、少なくともあと10年は大丈夫みたい。
のぶしげクン でも、側室に格下げになるけどね。
上田城完成!
うじざねクン なにはともあれ、上田城が完成したよね。
のぶしげクン 徳川に予算を出させた徳川と戦うための城。これを、三河や岡崎に人が聞いたら怒るかな。
うじざねクン 怒るだろうね。
のぶしげクン しかも徳川が痛い目に合うのは一回じゃないしね。
うじざねクン 今後展開がますます加速するはずです。